記念切手・特殊切手


 「記念切手」や「特殊切手」が発行されたのは、明治27年3月9日の明治銀婚記念が最初です。当時の切手に使われた華やかな印刷色と言えば、日本古代から尊ばれてきた紅色と紫色です。その二色が最初に使われました。大正に入ってから緑色系などが加えられましたが、現在の記念切手と比べてみると随分地味な感じがします。描かれている図を見ると、そうでなければ落ち着かないものであるようにも思います。大正5年11月3日発行の昭和天皇立太子礼の切手は、華やかな色彩の中にも荘厳な切手の様相を見せます。中でも、青(藍)色拾銭の儀式の冠の切手は、初期記念切手の素晴らしさを感じさせます。高額切手のため8万6千枚の発行にとどめたことが、今、収集家にとっては高嶺の花になっているのです。この辺りから発行枚数が徐々に増えていきます。現在では、実用の葉書や封書に貼付する記念切手特殊切手としてだけでなく、切手愛好者のための切手として数千万枚発行されています。

 「記念切手」「特殊切手」と言われる中に、「切手趣味週間切手」と言うのがあります。昭和23年11月29日に最初に発行されたのが、菱川師宣の見返り美人の図柄5円切手です。150万枚発行。次いで安藤広重の月に雁の図柄8円切手、200万枚。昭和30年、喜多川歌麿のビードロを吹く女の図柄10円切手、翌年東州斉写楽のえび蔵の図柄10円切手、いずれも550万枚発行。そして、まりつきの図・雨傘美人と続きます。850万枚・2500万枚と急激な増加を見せます。切手製造については、どの切手にも手抜きなどありませんが、「切手趣味週間切手」は特に力を入れて製造しています。切手用の額縁を手作りして、それに納めて眺めると、ミニではありますが立派な鑑賞絵画です。年を追う毎に製造技術が進歩し、趣味切手だけでなく、他のシリーズ切手についてもうまく出来過ぎて、却って味が無くなってきたようにも感じられます。印刷方法や仕方の変化を示すものだと思われます。



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