通常郵便切手が一番影響を受けたのは、何といっても戦争です。物資の欠乏による影響 は、一目見ただけでよく分かります。上掲の切手は、昭和20年の郵便切手ですが、刷色 が緑色から青色まで微妙に違っているのがお分かりでしょう。意図的に印刷したのではな くて、規定の色にしようとさまざまな努力をしたのですが、何分にも刷色原料が無くて、 微妙な刷色の違いを生んだのです。今見ると楽しい切手ではありますが、当時の切手製造 が実に大変なものであったことを伺わせます。これもお気づきのことと思いますが、使い 易くするための「目打ち」が無いでしょう。周りにあけてある小さな穴のことです。穴あ けの機械が使えなかったのです。覚えておられる方もいらっしゃると思いますが、手紙に 切手を貼る時には、丁寧に鋏で切ったのです。このような郵便切手は、まだほかにもたく さんあります。
また、民間に切手製造を依頼した法隆寺五重の塔30銭切手があります。平山秀山 堂が製造したのですが、これとて、刷色原料は一定しておりません。
昭和17年から製造された筥崎宮勅額10銭の切手は、当初淡灰色でしたが、次の増刷 では水色に変わっています。これは前述とは異なり、明らかに別の色を用いたのです。 米国進駐軍から、図柄上使用禁止を命令され、廃棄処分の憂き目を見ましたが、禁止後に 使用されたエンタイアが残っているのを見ると、内々使用されたか、郵便局が黙認してく れたかでしょうね。